月額7円で携帯が持てる「スパボ一括9800円」が生まれたワケ

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 「月額7円でケータイが持てます!」――。最近、家電量販店やネットで話題となっているのが、ソフトバンクモバイルの「スパボ一括9800円」と呼ばれる売り方だ。

 「スパボ一括9800円」とは、同社が提供する割賦販売制度「新スーパーボーナス」を使いつつ、端末の購入時に端末代金を一括で支払うというもの。最新機種の場合、一括払いを選ぶと通常は5万円以上することがほとんどだが、この場合は9800円。ただし、購入できる製品は2006年秋冬モデルとなる「705N」「910T」などほとんどが型落ち機種となっている。


■分割払いせず特別割引を利用

 なぜこれが話題になっているのか。新スーパーボーナスは端末代金を毎月分割で支払う代わりに、それに見合った額の特別割引が適用されるサービスだ。高機能機種では月々の分割払い額が2000円強と高くなってしまうが、ソフトバンクモバイル側が毎月特別割引を実施することで、ユーザーの毎月の負担を少なくしている。

 これは一種の販売奨励金のようなものだ。通常、販売奨励金は端末を購入する段階で販売代理店に渡り、その分だけ端末価格が安価になるが、新スーパーボーナスでは販売奨励金に近いものを毎月分割で後払いしているような構図となっている。

 新スーパーボーナスは、分割払いを選ばずに一括払いで端末を購入しても、毎月の特別割引は適用される。「スパボ一括9800円」も同様で、約2年間に渡って毎月980円分が割り引かれるようになっている。

 「スパボ一括9800円」で最初に9800円を支払えば後々の分割払いの負担はなく、しかも月980円の特別割引は毎月適用される。つまり月額基本料が980円のホワイトプランを契約すれば、2年間は毎月の基本料「0円」で使うことが可能なのだ。ただし実際は、ユニバーサル料金として毎月7円が別途請求される。


 月額基本料7円のケータイ。これが話題にならないわけがない。ホワイトプランの月額980円でも安いと思ったが、まさか月額7円でケータイを持ててしまうとは、かなり衝撃的だ。もちろんホワイトプランなので、深夜1時~夜9時までのソフトバンク同士の通話も無料となる。

 この売り方は一部の家電量販店やショップなどごく限られた店舗で行われているようで、期間も不定期のようだ。(ただし、この1カ月の間に何回か東京・新宿の家電量販店では、当たり前のように売られていた)。対応機種は「705N」といった在庫処分品なので、必ずしも飛ぶように売れているわけではない。

 ソフトバンクモバイルは今年5~8月の4カ月、月間契約者数でトップを獲得しているが、「スパボ一括9800円」は台数が限定的なので、どこまで全体の契約者数を押し上げているかは未知数。「スパボ一括9800円があったからトップを獲れた」という劇的な効果はないと思われる。


■「月額7円」でも端末を売りたい販売店とソフトバンク

 では、なぜ月額7円というとんでもないプランが登場してしまったのか。これはやはり割賦販売制度の限界が生み出してしまったものといえるだろう。

 新スーパーボーナスでは、どんなに高機能な最新機種でも店頭の購入代金(分割払いの頭金)は「0円」だ。消費者が機種変更をしようと家電量販店に行って品選びに悩んだとき、どれも同じ「0円」であれば、どうしても高機能な機種に手が伸びる(実際は毎月の負担額が高くなる)。結果、最新機種や個性的な機種が人気となり、目立たない機種は売れ残ってしまう。

 これまでの売り方であれば、2万円で売れなかったら、販売奨励金によって端末代金を「1円」や「0円」にしてしまえば在庫をさばくことができた。しかし、新スーパーボーナスではすべてがはじめから「0円」。価格での差別化は困難であるため、結果として不良在庫を処分するために、「スパボ一括9800円」のような月額基本料金を割り引く売り方を取らざるを得なくなったのだ。

 あるメーカー関係者は「ショップにとって、不良在庫を抱え、ましては廃棄処分をするとなると莫大なコストがかかる。ならばどんな方法を使っても、売ってしまった方がいい」と話す。


 実際、「スパボ一括9800円」では、販売代理店が相当な金額を負担して販売しているようだ。とはいえ、キャリアからショップに対しては、端末を1台売るごとに支払われる販売奨励金だけでなく、毎月の売り上げ台数やオプション、コンテンツを売るごとに支払われる販売奨励金など、さまざまなインセンティブが存在する。多少、どこかで損しても、他で儲ける仕組みが整っている。

 ソフトバンクモバイル側から見ると、とにかくほしいのは契約者数だ。4カ月連続で月間契約者数ナンバーワンという広告効果も絶大だが、ボーダフォン買収時に必要だった資金の借り入れ条件に、契約者の増加が必須になっているというのは有名な話。ソフトバンクモバイルにとって、新規契約者は喉から手が出るほど欲しいはずだ。

 ただし、「スパボ一括9800円」で獲得したユーザーが、無料通話しか使わないとなると、ネットワークの負担が増加するだけで終わってしまう。いかに他社あてに通話させて通話料を稼ぎ、さらに他社から着信させて接続料を稼ぐかが課題となる。また、データARPU(一契約当たりのデータ通信量)で稼ぐという戦略も考えられるが、いかんせん型落ち機種で機能やスペックは低いこともあり、あまり期待できそうにはない。

 新スーパーボーナスで分割払いをする場合、支払期間中は契約が拘束されるので、ユーザーを囲い込むことができる。しかし、「スパボ一括9800円」の場合、すでに一括で支払ってしまっているため、いつでも解約することができ、ユーザーを囲い込めないのも弱点だ。とはいえ、毎月7円しか支払わなくていいのであれば、解約を検討することもないのだろうが。


■月額7円ケータイに割賦販売の限界を見た

 今回、「スパボ一括9800円」を見て感じたのは、「割賦販売方式にも綻びがある」ということだ。割賦販売方式は、ユーザーを囲い込むことができ、端末代金の支払いを公平に負担してもらえ、会社経営的にもメリットが多いとされている。一方で、不人気機種を在庫処分しようと思っても端末代金を値引けないため、月額基本料金を割り引くという施策を行わなければならない。

 NTTドコモやKDDIが割賦販売方式に二の足を踏んでいるというのは、こうしたマイナス面に躊躇しているところもあるのではないだろうか。

 今はソフトバンクモバイルが在庫調整システムを作り上げつつあるタイミングであり、「スパボ一括9800円」は過渡期の限定的なもので終わるかもしれない。将来的に不良在庫を出さないような在庫管理システムが確立されれば、「スパボ一括9800円」のようなものは出ないことが予想される。

 総務省のモバイルビジネス研究会では、端末代金と通信料金の分離プランといったものも検討されているが、「スパボ一括9800円」を見る限り、誰もがわかりやすく公平な仕組みづくりというのは困難なように思える。

 家電量販店にタイミングよく訪れた客は「スパボ一括9800円」で月額7円のケータイを手にすることができ、そうでない客は月額980円で我慢する。資本主義社会である以上、ユーザーが1億人もいれば、どんなに努力しても、すべて公平というのは難しいのではないだろうか。

 モバイルビジネス研究会が本気ですべての人に公平で平等なケータイの料金負担を考えるのであれば、すべての端末を国が買い上げ、国民に配給していく「ケータイ社会主義国家」にするしか道はないかもしれない。それだけ、すべてのユーザーを公平にしていくというのは現実離れした話なのだ。

 ケータイは、端末価格があり、毎月の支払いがあり、ユーザーとキャリアの契約関係がある。しかも、3社以上の会社が熾烈な競争を繰り広げているだけに、「新スーパーボーナス」が完璧な販売方式ではないことがわかった今、他社が新たな販売方式を投入してくる可能性は充分にある。

 もはや、ケータイ業界における販売方式は自由競争下にあるのであり、国がコントロールできるようなものではない。価格は国やキャリアが決めるのではなく、最終的には消費者が決めるのだ。

 賢く安い買い物をしようと思ったら、多少の情報収集は必要であるし、わからないことは店員に聞くことが大切だ。「ケータイ料金が高い!」と感じたら、まずは自分の料金プランが適正なのかを見極める作業から始めなくてはならない。端末代金や通話料金で得をしようと思ったら、まずは自分からアクションを起こすことだ。

引用元:IPlues
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